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これが秋田人形道祖神アート!

秋田県マップ   1 大館市の人形道祖神

2 能代市の人形道祖神

3 男鹿市のナマハゲ

4 仙北市の人形道祖神

5 大仙市の人形道祖神

6 美郷町の人形道祖神

7 横手市の人形道祖神

8 湯沢市の人形道祖神

9 北秋田市の人形道祖神

10 にかほ市のナマハゲ/アマノハギ

王国・秋田が誇る道祖神クエストの旅へ!
クリックすると絵と道祖神の写真を比較いただけます。Please click to enlarge.

1 大館市 Odate

小雪沢のドジンサマ 女神 Ver2 小雪沢のドジンサマ・女神Ver2
大館市内から小坂を抜け、鹿角へ延びる樹海ライン沿いに点在する道祖神のひとつ。失われた手を付けてみる。数百年も生き続ける原始的な姿に感動。
  小雪沢のドジンサマ 女神 小雪沢のドジンサマ・女神
ベンガラの赤は「猛毒だから気をつけて」と教えてもらう。触ると手や服が赤くなり取れにくい。毒の赤は美しい。毎年描かれる顔が一定しないので、毎年拝見するのが楽しみ。

山田のジンジョサマ 男神 山田のジンジョサマ・男神
(新明岱常会)

1集落に8ペアの神様、合計16体の神様が集中する山田集落。旧暦10月末日の前日に行われる「ぶっつけ」は見逃せない(新明岱では行われない)。見事なチームワークに感動
  山田のジンジョサマ 女神 山田のジンジョサマ・女神
(赤坂常会)

道祖神の中でも人間の形状に近いため、神々しさをどのように表現するかが制作の肝となる。

松峰のニンギョサマ 武蔵坊 弁慶 松峰のニンギョサマ
武蔵坊 弁慶

3体の神様が祀られる松峰集落。鉱害によって集団移転した歴史がある。作り替え行事と町内の巡行を取材させてもらった。
  松峰のニンギョサマ 源 義経 松峰のニンギョサマ
源 義経

3体のうちの一体。真ん中。巡行中、首回りにお供えとして刺されたきりたんぽに、「まさに秋田の風景!」と感動。後で皆さんで食べられるという。お裾分けいただいた。

松峰のニンギョサマ 那須 与一 松峰のニンギョサマ
那須 与一

3体のうちの一体。一番背が高い。巡行中に日が暮れ、顔の周囲に挿されたロウソクの炎が浮かび上がり、異国のような祭りに思えた。
  中羽立のニンギョウサマ 中羽立のニンギョウサマ
男1

3体のうちの一体。一番背が高い。作り替え後に行われるキリタンポやお酒を奉納するシーンには驚いた。こんな行事を今でも見ることができるのは奇跡的。

粕田のニンギョウサマ 粕田のニンギョウサマ・女神
2体のうちの1体。その形状に思わず「どすこい!」という言葉が脳裏に浮かぶ。集落の皆様はとても朗らか。虫追い行事と豊かな水量が印象的であった。
     

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2 能代市 Noshiro

小掛のショウキサマ 男体 小掛のショウキサマ・男体
村の入口に男神、山側の出口に女神が鎮座する。手が長くミノムシのようにフサフサした胴体。とてもユニークな姿は何度でも絵に表現したくなる。
  小掛のショウキサマ 女体 小掛のショウキサマ・女体
男体と同じく体格は立派。しかしお顔は少し柔らかい面影がある。2020年、角川武蔵野ミュージアム(埼玉県所沢市)収蔵用に1体作っていただいた。

小掛のショウキサマ 男体 小掛のショウキサマ・男体
杉の葉をまとう前の姿。資料写真ではその可愛らしさに驚いた。おっぱいとおへそがしっかりみえる。作る過程を拝見すると勇ましい印象に変化。
  鶴形のショウキサマ 下・男神 鶴形のショウキサマ・下・男神
集落に6体(男女半々)が鎮座。全て異形で怖い印象がある。駅の周囲に点在している為、歩いて周回が可能。

田代のショウキサマ 田代のショウキサマ
「近くに似たお面が祀ってあるよ」と小掛のNさんから情報をいただき、拝見することができたお面。現・北秋田市とは昔から文化圏が重なっていたらしい。
     

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3 男鹿市 Oga

男鹿のナマハゲ 男鹿のナマハゲ
男鹿市を中心に約80の集落で行事が行われている。道祖神が終わればナマハゲの世界を調べ描いていきたいが道祖神がなかなか終わらない。
     

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4 仙北市 Senboku

吉田のワラニンギョウ 吉田のワラニンギョウ
初めてみた姿は、冬を越えボロボロの状態であった。顔が取れていたが、3頭身のぽっちゃりした姿にひとめぼれ。毎年顔や姿の雰囲気が劇的に変わるのがユニーク。
     

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5 大仙市 Daisen

鶴田のショウキサマ  鶴田のショウキサマ
ワラで美しく編み込まれ、とてもユーモラスで可愛らしい姿。一度休眠されたが最近復活した。会いに行きたい神様。
  中荒沢のショウキサマ 下 中荒沢のショウキサマ・下
小さな祠にギュッと収められ、作り替えを取材させていただくまで、体の作りがよくわからなかった。おっぱいやへそ、膝に使われる小さめのサンダワラが可愛らしい。ミノボッチが特徴。

北観音堂のオニョサマ 北観音堂のオニョサマ
人目に付かないよう置かれている。兜が外されたお顔はとても精悍。見事な彫りのお面は一見の価値あり。現在全体の作り直しに向けて準備中。
  上小曽野のオニョサマ 上小曽野のオニョサマ
彫りが素晴らしく、悪霊退散が可能に思えるほど迫力満点。オニョサマ立てで歌われるゴスペルのような歌も、ずっと耳に残る美しい音色。

夏瀬のお面 夏瀬のお面
八幡神社に置かれている2つのお面のうちの1つ。何とも言えない表情が印象に残る。道路工事のため神社に移された。
     

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6 美郷町 Misato

本堂城跡のショウキサマ 本堂城跡のショウキサマ
本堂城の広大な跡地に鎮座する。春は菜の花で黄色に染まる風景に感動する。カリスマリーダーのSさんが亡くなられた後も皆様が引き継いで毎年1回新調される。
     

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7 横手市 Yokote

末野のショウキサマ 末野のショウキサマ
カシマ立てとカシマ流しが同日に行われる貴重で稀有な集落。リーダーのSさんの情熱に触れ、時に感極まることも。鹿島人形コンテストが開催される等、秋田の中でもとりわけ熱い集落。
  中ノ又のカシマサマ 中ノ又のカシマサマ
末野に割と近い。昭和40年代の生活改善運動でカシマ流しができなくなり、カシマ立てに進化した。現代風にアレンジ・進化していくのが特徴。

木下のカシマサマ 木下のカシマサマ
十文字町木下にある人形道祖神。夏に作り替えが行われる。午前中に作り上げ、夕方から改良したポンプ車に載せて巡行する。巡行する距離は長く、気づけば周囲は真っ暗に。盛大なお祭り。
  藤巻のヤクジンサマ 藤巻のヤクジンサマ
毎年新調される100kg以上の神様を人が背負い、祠まで運ぶ行事が秋田県内では知られている。背負っても壊れないよう頑丈に、また美しく編むなどワラ編みの技術が高い。

田代沢のカシマサマ 田代沢のカシマサマ
秋田県最大の道祖神。桜が散り始める頃、作り直しが行われる。目の前にある石油のような香りがする源泉掛け流しの温泉に入ると、翌日の肌はツヤツヤ。
     

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8 湯沢市 Yuzawa

末広町のカシマサマ 末広町のカシマサマ
水神社の裏に鎮座するその姿に圧倒される。近くに2体のカシマサマがある。4月の作り替え時は集落の皆様が集まり、その様子は壮観。メジャー級の道祖神。
  若畑のニンギョウサマ 若畑のニンギョウサマ
年に3回も作り替えが行われる。まさに若畑パワー。他に小さなワラニンギョウを2体、村の境界に置く。「ツツコ」を初めて知る。

オッペチのカシマサマ オッペチのカシマサマ
取材で最も驚かされた道祖神。「ガモ突き」がとにかく凄い。実はガモ(男根)がご神体。美術館収蔵用に神様を作っていただいた。その過程で集落の皆様の考え方に触れ、感銘を受ける。
  白沢のニンギョウサマ 白沢のニンギョウサマ
ニンギョウサマの中でもその造形が大変可愛らしい。周辺には複数のニンギョウサマが点在し、「道祖神女子」にとってまさに聖地。
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9 北秋田市 Kitaakita

桐内のショウキサマ 桐内のショウキサマ
旧桐内村はダムに沈み現存しないが、森吉山ダムを見下ろす十四合同神社で2つのお面をみることができる。当時の写真から、真ん丸な目があったことがわかる。
  桐内のショウキサマ 桐内のショウキサマ(想像上)
御年80代のTさんが子どもの頃、ワラの胴体がある桐内のショウキサマをみたことがあるそうだ。目がギョロっとし、髪が生え、人間のようでとても怖かったそう。

小様のショウキサマ 小様のショウキサマ・上
鉱山が連なる山間にひっそり存在する面。お堂がある付近の石は空気に触れると粉々になってしまい、鉱石には向かないとのこと。個人が守られているお堂に保管されている。
  小様のショウキサマ 小様のショウキサマ・下
木で作られているため、鼻などが取れてしまっていた。先述のTさんに見せていただいた昔の写真を参考に描き上げる。実際は赤く塗られている。

塚ノ岱のショウキサマ 塚ノ岱のショウキサマ・大きい
「もう存在していないかもしれない」と調査中諦めかけていたお面。地元の皆様の助けで対面することができた。感無量。
  塚ノ岱のショウキサマ 塚ノ岱のショウキサマ・小さい
昔はどのような胴体であったのか謎の神様。同集落の90代の方もわからないとのことで、ずっと以前に作り替えは終わっていたようだ。鉱山地域では、人形道祖神の行事が継続しにくい理由があるのかも。

桂瀬のショウキサマ 桂瀬のショウキサマ
現存しない神様。90歳近い男性に伺った話を元に描く。「手はぎゅっと・・・」「頭は確か俵で・・・」など貴重な証言を教えていただいた。こちらも鉱山で活気づいた町の道祖神。
     

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10 にかほ市 Nikaho

石名坂のナマハゲ 石名坂のナマハゲ
正式名称はアマノハギ。日中は人形道祖神の「お社」である小屋焼きが行われ、夜に山からナマハゲがやってくる。この日の子ども達は、これから訪れる恐怖で憂い顔になる。
     

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イラストレーターなのに!?道祖神を有名にしたい奮闘記!

概 略

 私はイラストレーターを生業としていますが、「秋田人形道祖神プロジェクト」(以下、ANP)では企画やディレクションも担当しています。当初は絵を描くだけでしたが、ANPの活動が多岐にわたるにつれ、企画・講演・シナリオづくりなどと自然と担うものが増えていきました。
 また、さらなる高みを目指そうと「リサーチ」分野へも足を踏み入れました。恐る恐るの挑戦から、徐々に本格的な参画へ。未経験の分野だったので当初は戸惑いもありましたが、少しずつできる範囲を広げていきました。
 この場をお借りし、イラストレーターが異業種へ挑戦する「奮闘記」をご紹介いたします。

 今でこそ「人形道祖神」の認知はあがりましたが、同プロジェクトを始めた2018年当時、秋田県内でさえ「人形道祖神って何?」という状況だったと記憶しています。それぞれの地域で呼ばれる名称が「カシマサマ」「ショウキサマ」「オニオウサマ」等バリエーションがあったりし、「人形道祖神」という全体像がみえにくかったことが考えられます。
 地元に根付く文化遺産や特産品の魅力を広めたいと考えられた場合に、筆者の活動が少しでもご参考になれば幸いです。

< 目次 >
ANPについて
分担制から複合性へ
  → 名古屋市立大学様「地域連携参加型学習」でのレクチャーのご紹介
自費出版した本のこと
取材のスタンス
堅実の小松、攻めの宮原
  → 角川武蔵野ミュージアム展示の秘話
  → 秋田県立近代美術館 企画展示の秘話
  → 商業出版制作秘話

WEB化
現在について(2022〜)


ANPについて

 郷土史研究の小松さんとイラストレーター(※)の筆者の2人で営んでいます。2017年に大阪から秋田へ移住した筆者が「道祖神をテーマにしたアート本を作りたい」と、秋田市在住の小松さんに執筆を依頼したことがきっかけで発足。「こんなマイナーな自費出版の本なんて、簡単に売れるはずがない」と思ってましたが、ツイッターがバズり、半年で約1500冊が販売されました。都内の有名書店様でのお取り扱いが決まったりし、あれよあれよと活動が広がっていきました。
 2021年までの間に、ANPは目まぐるしく成長していきます。下記でご紹介する2つの美術館や、渋谷ヒカリエなどにある都内の各店舗様、道祖神の集中地帯に位置する図書館等の皆様から展示依頼を頂戴するようになり、当初は思いも及ばなかった数々の挑戦を経て、ぐんぐん逞しくなっていきました。(皆様、その節は本当にありがとうございました!)

 2022年、私は秋田を去ったので運営を小松さんにお任せしていますが、クライアント様のご依頼もあって2023年時点では以前よりも深く関わらせていただいております。秋田在住時に比べてフットワーク軽く取材はできなくなりましたが、短期集中型で秋田へ足を運んでいます。リサーチ力が以前に比べてだいぶ向上したので、人形道祖神の魅力をより一層楽しんでいただけることが可能になりました。(2023年の事例はこちら

(※)現在の肩書は「イラストレーター」ではなく、人形道祖神に関する活動限定で「アートクリエイター」としています。
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分担制から複合化へ

ハラカラ紙面  新聞(秋田魁新報社『ハラカラ』)や書籍制作などの一般の方向けの媒体では、郷土史研究家の小松さんが執筆した原稿をチェックしています。文化遺産をリサーチするという、どうしても専門家向けになりがちな世界。あがってくる原稿は一般の方が読んでわかりにくかったり、もっと整理した方がよい時もあったりします。その場合は修正を依頼したり、絵で補ったり、時には自分で取材した内容を提供することも。最近では書籍や寄稿では共著することもあります。

 当初はこうして「執筆&リサーチは小松、絵と編集は宮原」という分担制でしたが、ANPが成長していくにつれ、その役割が変化していきました。詳しくは下記でご紹介しますが、筆者の活動が「絵」を越え「リサーチ」も含むようになったのです。例えば2021年に刊行された『村を守る不思議な神様・永久保存版(KADOKAWA)』では、これまで未開拓であった「長老」「食」などテーマを広げ、自らのリサーチ&シナリオを元に漫画を描き上げました。

 また、地元の方とお話しさせていただくのがとても楽しく、以前から私も聞き取り調査に積極的に参加していたのですが、聞き取った内容をメモすることなく小松さんに任せるだけでした。しかし、文献上の確認を目的としたヒヤリングに「もっと話の先を知りたい、対話を掘り下げていきたい」と感じる場面が多くなり、自ら聞き取った言葉を、ときに地元のみなさんが語ってくれた「素」の部分や本音も含めて、しっかり記録し、それらを挿絵や漫画で展開できるようにしました。(もちろん、記録を後世に残していくためにも文献上の調査はとても重要であり、ANPの大切な基盤となっています)

 こうした活動は自己満足にすぎないかもしれない、と不安もありましたが、まずはなんでもやってみよう、イラスト業も最初はゼロからのスタートだった、という思いから出発。すると教わったことをメモし考察を重ねていくうちに、別の視点を持てたり、さらに深く切り込む質問ができるようになり、リサーチがどんどん立体化していくことを実感。「リサーチは面白い!」「リサーチしたものを、自由な発想で絵や文字で表現していきたい」とますますこの世界にハマっていきました。



 共同通信配信の書評そんな矢先、共同通信系の紙面でアーティストの藤 浩志さんによる『村を守る不思議な神様・永久保存版』の書評が掲載され、突然のことでびっくりしました。そこには「過疎化が進む中、今しかできないフィールドワークの貴重さと、そこから生まれた新たな表現の力を思い知る」という言葉が綴られ、試みが伝わっていたことを感じました。書籍制作中は「この方向で果たしてよいのか」と誰にも相談できず自問自答を繰り返すばかりで(実務的な部分は編集の方に相談できましたが)、ここで初めて、安堵の気持ちで胸がいっぱいになりました。もちろん厳しいご意見もあるかと思います。

 また講演会では、当初は小松さんに話に合わせてラジオのように聞き取り役を務めるのが精一杯でしたが、現在は独自の視点で発表しています。2021年に福島県立博物館の企画展「藁の文化」で開催されたシンポジウムでは、たった10分でしたが、集落のリーダーの生き様に焦点を充てた内容で発表(詳細はこちらのブログまで)を行い、専門家の方に「斬新な視点で驚いた」、京都市立芸術大学様主催のアートプロジェクト「霧の街のポリフォニー」での講演では40分を単独で担当させていただき、総合的に「リサーチしたものを形にしていく過程が、学生に勇気を与えたと思う」と評価してくださいました。


<名古屋市立大学様 授業「地域連携参加型学習」の一環でのレクチャートーク(2022)で筆者が講演したスライドのご紹介 >

 「地域の文化財の保存・活用をテーマに、名古屋城の魅力の発信という課題」を勉強される文系の学生の皆さまの参考となるよう、レクチャーを担当いたしました。「ANPは民俗文化財をアートと結びつけてその魅力をひろく伝えることに成功したケースではと考えている」として、同大学の佐藤准教授よりご依頼を承りました。非専門家である筆者の取り組みが、同じ立場である学生の皆さまにとても参考になったと評価いただきました。
 下記に一部ですがスライドをご紹介します。

レクチャー

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 当初の「執筆&リサーチは小松、宮原は絵だけ」という分担制から複合的な体系へ。これはANPの強みでもあるのですが、さまざまな挑戦を経て、変化していくことができたのだと思います。

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自費出版した本のこと

本 書籍『村を守る不思議な神様1』を作った2018年当時、小松さんも私も「道祖神ビギナー」だったので、皆様と同じ目線で謎を解いていく過程を書くことができました。今読んでもとても面白いです。(絵はブラッシュアップしたいですが!)続巻『村2』では、だいぶ経験値があった為、小松さんが得意とする文献ベースがメインになりました。昔の文献で記されている状況と今との比較や、歴史的背景が主な内容であり、『村1』に比べて専門的領域がかなり増えました。『村1』と『村2』と、どちらの手法がよいかは賛否両論ですが、両方の本をご購入いただいた方々が「1巻をとても面白く読んだ。2巻はまだ読めていない」という意見もあったりし、『村2』を進化させたらさらに良くなるのではないか感じています。(勿論『村2』も、民俗学や歴史に興味があれば抜群に読み応えがあります!)

 『村2』の制作当時、原稿が大幅に遅れ、短期間でイラスト制作を進めざるを得なかったこと、また当時小松さんに取材を全面的に任せていたこともあり、最低限の意見を述べるに留まりました。このときの悔しさが、私自身のリサーチの取り組み方を変えることになります。

 またイラストレーターとしての経験を大いに活用し、原稿に合わせて必要なイラストを自ら考え制作しています。原稿を読み、取材中の視界が読者に伝わるよう映像化していく感覚です。たまに小松さんより「挿絵が多すぎるのでは」と指摘がありますが、読者の皆様から「わかりやすい」「手に取りやすい」というご意見が届いており、「歴史的・民俗学的なわかりにくい世界だからこそ、多めの挿絵やその難解さを払拭させる大胆なイラストが必要」と思いますので、とりあえずこれでよいのではと考えます。

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取材のスタンス

 ANPの2人で取材しています。当初は小松さんが歴史的・地理的な背景などインタビューを通じてリサーチ。私は地元の方との会話からリサーチをスタートしました。当初秋田言葉のイントネーションを全く理解できなかったのですが、2年も経つとわかるようになり、様々な視点から質問ができるようになりました。

お話を伺っている様子 集落の皆様は取材に慣れておらず、調査上の形式的な質問に対して答えに窮したり、話しにくそうな場面をよく見かけました。そこで私は、集落での井戸端会議やふとしたおしゃべりに加えてもらい、生の声を拾うようになりました。普段の「おしゃべり」が一番活き活きしています。取材先の作業場では端から端を飛びまわり、お一人お一人にヒヤリングしていると、ふとしたタイミングで物凄い情報を結構な頻度で頂けるので、その度に小松さんと共有しています。

 最近ではさらにリサーチ力がついたようで、自ら取材したものをブログや講演などで発表するようになり、それらのコンテンツや、2人で取材を行う中で私が聞き取った内容を小松さんが活用し始めました。ANPとして自由に使っていただいて問題ないのですが、現状はすべて彼の実績として発表されているので、使われる場合はそろそろクレジットを出してもらえたら嬉しいです。

 2022年7月、久々に秋田で単独取材をさせていただき、改めてリサーチの面白さを自覚しました。今後もトライアンドエラーを重ねながら、クリエイティブ且つマイペースに発表/表現活動をしていきたく思います。

堅実の小松、攻めの宮原

ハラカラ紙面 小松さんは秋田県内の歴史や文化に造詣が深く、饒舌で、調査やリサーチを得意とする一方で、一般の方にわかりやすく伝える選択肢が限定的であったり、堅実な調査ゆえのクリエイティブな思考、プロジェクトの工程管理が苦手です。また機が熟すまでじっと静かに待つ慎重派。

 一方私は、資金の管理が苦手であり、また車の運転ができないため、いつも彼に乗せてもらい現場へ向かっています。そして口下手、日本史は漫画で学んだレベル(現在は日々勉強中)・・・しかし結果が出るまで、何度失敗してもへこたれず突進したり、型にはまらず自由な発想でリサーチ/企画/発表を行うので、互いの不得意な部分を補い、得意分野を活かすようにしています。それぞれの特徴がよくわかるエピソードをご紹介します。





角川武蔵野ミュージアム「妖怪伏魔殿」秘話


角川武蔵野ミュージアム  2020年に完成した角川武蔵野ミュージアム(埼玉県所沢市)のこけら落としとして、「3体ほどの人形道祖神を展示したいので作ってほしい」と打診があり、最終的に7体の神様と1艘の鹿島船が展示されました。

 当初「先方が希望する3体でいいのでは」と小松さん。「いや、道祖神の迫力を感じてもらえるようもっと展示したい」と私。

 「今までの取材を通じて信頼関係を築くことができた集落の皆様にお願いしよう」と小松さん。「いや、首都圏の皆様が初めて道祖神をみる機会なので、インパクトがある神様、例えば(県外出身者の)私が初めて対面し感銘を受けた神様に声をかけてみたい。信頼関係がまだ構築できていない集落でも、企画書を持参し相談に伺ってみよう」と私。今思えば無謀な考えでしたが(汗)、当時は無謀を無謀と思わないほどの情熱が自身に溢れていました。

 ある程度制作が決まった段階で「もうこれでいいのでは」と懸念を示す小松さんを説得することも。互いが向き合いバチバチになることもありましたが、最終的に「宮原がそこまで言うならばやってみよう」となり、その後は積極的に対応してくれたおかげで、最後に御返事(オッペチ)のカシマサマの展示が決まりました。(小松さん、その節は無理を申しましたがありがとうございました。)

 各集落の皆様へ小松さんにアポイントを依頼、私は企画書を準備。そして2人でご相談に伺いました。

 多くの集落の皆様に賛同いただき、6月から各地で展示の制作がスタート。道祖神1体を制作するために大量のワラが必要で、秋の収穫後ならまだしもこの時点でワラはなく、様々な場所からかき集めたと伺いました。また制作過程を取材させていただき、長老のこだわりや長年培われてきた知恵を教わったり、また「私たちの道祖神を東京の人にもみてほしい、知ってほしい」という皆様の願いに何度も心が揺り動かされたりし、これを実現するのがANPの活動意義だ、と気持ちを引き締めることもありました。

トラックに入れる様子 2020年7月のコロナ禍の中、私は角川武蔵野ミュージアムへ道祖神を搬入しに向かいました。館内の収蔵庫に収めるのが目的です。道祖神を運び出す際、電線に引っ掛からぬようクレーンを器用に動かし、13tの大型ユニック車に収めていくドライバーさんの見事な手さばき、そして東京に向けて、青々としたホップ畑の向こうへ消えていくトラックの姿が強く印象に残っています。その足で私は小松さんに見送ってもらい、大曲で秋田新幹線に乗り込み、大宮へ向かいました。翌日は大雨で新幹線が動かなかったそうです。

 大宮到着の翌日に美術館搬入が行われました。事前に厳重な入館手続きを済ませておいたので、秋田からやってきたトラックは問題なく入館でき、スムーズに道祖神の引き渡しが行われました。(道祖神が壊れないよう、極力揺らさないよう運転してくださったそうです。ドライバーさん、ありがとうございました!)引き渡しの後は館内のバックヤードや、同館を設計された隈研吾さんの展示搬入を見学。数ヶ月後にはお連れした道祖神が同じフロアで一同に展示されるのだ、と思うとドキドキしました。

 そして、10月にいよいよ道祖神を設置するため、再び埼玉へ向かいました。集落の皆様の思いに応えたいと、道祖神を展示する際に必要な「イボ結び」を猛特訓の上習得し、地元に近い形式での展示に臨みました。素手で何度も縄を結んだため、搬入終わりには、掌から腕にかけて無数の小さな傷が湿疹のように真っ赤に広がっていました。ワラの痛さを初めて知りました。

 その一方で、お連れする道祖神が増えてしまったので、運送や費用など負担も増加。しかし、小松さんが知り合いの運送屋さんにアポイントを取ってくれたり、経理や集落の皆様との連絡係を率先して担ってくれたりし、お互い力を合わせて難局を乗り越えることができました。結果的には、地元の皆様の多大なるご支援のもと、秋田県内7カ所の人形道祖神の展示され、その迫力が評判となり美術館への収蔵が決定しました。

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秋田県立近代美術館「あわいをたどる旅」展 出品作品


展示壁面  2019年、相棒の小松さんの元に、秋田を代表する江戸時代の旅行家兼博物学者の「菅江真澄(すがえますみ)」に関する美術館展示の協力依頼が舞い込みました。「菅江真澄と人形道祖神をつなげてみたい」と考えた小松さんは、交渉の末に人形道祖神の展示を実現。(大感謝!)
 さて、作品はどうしよう?
 「ルポルタージュ形式にしたい」というアイデアを提出したところ、採用されたので(詳細はこちら)、そのネタづくりで小松さんの調査ブランを元にリサーチを行いました。そして互いの展示プランを話し合いました。
 彼の意見は「今回調査したことを含めた道祖神分布マップを作れたらいいな」ということでしたので、「せっかくの美術館展示なので、もう少し掘り下げてみよう。先日決まったルポルタージュ形式を広げるから、そのシナリオを私が担当させてもらってよいか?」と提案。率直な意見交換を経て、自由にやらせてもらうことになりました。(展示におけるANP作品の意義を考慮し、また小松さんがやりやすいよう書籍に近い形態を選びました)
展示壁面 早速自分の取材メモを片手に、それぞれ時間と空間軸が異なる2つのストーリーが最後でつながるシナリオを練り上げました。その後、史実的なチェックや加筆を彼に依頼。同時に絵の制作も進めていきました。

 先述の角川武蔵野ミュージアムへの搬入と同時進行となり、さらには、(シナリオ制作含め)2カ月半の制作期間で道祖神画をおよそ100枚制作するという殺人的スケジュールとなった同プロジェクト。どちらも筆者がANPの実質的な責任者も務めていたので、任務遂行まで一切気を抜くことができませんでした。展示のデザインを手掛けてくださった越後谷さん、展示準備に奔走してくださった岩根さんと高橋さんのご尽力がなければ実現は難しかったと思います。チーム一丸となって熱く走り抜けたこの経験を通じ、ANPそれぞれの得意分野が明確になり(当初私は遠慮し「絵」の範囲を超えようとしませんでした)、ANPの動きが変わっていく良い機会になったと思います。

 ちなみに展示の一部は『村を守る不思議な神様・永久保存版(KADOKAWA)』の『幻の泥塑天子を探して』の章でお読みいただけます。

photo:草g 裕
展示デザイン:越後谷 洋徳
展示協力:岩根 裕子、高橋 ともみ アーツセンターあきた

KADOKAWAより書籍「村を守る不思議な神様・永久保存版」刊行 2021


村を守る不思議な神様の書影  2020年秋、無事に角川武蔵野ミュージアム様に人形道祖神を納品した際、私にはもうひとつの目標がありました。「ミュージアムと同じ敷地内にKADOKAWAの本社がある。ということは、編集者の方も、本物の道祖神を見る機会があるのではないか」「道祖神の魅力を感じていただけたら、書籍化の可能性が生まれてくるのではないか」
 勇気を振り絞り、美術館展示でお世話になったキュレーターの宮本武典さんに編集の方をご紹介いただけないか相談してみました。すると早々につなげてくださり、小松さんも「まさか!」とびっくり。

 しかし、ここからが本番です。編集部内でGOサインが出ないと出版の道は開かれません。担当編集のSさんと、企画会議に向けて企画書づくりを開始。Sさんが企画書を作りやすいよう、様々な切り口を提案させていただきました。(こういう過程は割と得意です。)例えば、世にも恐ろしい不思議な話を取材の中から集めてみたり、「長老」の生き様を切り口にできないかという可能性、秘境感が感じられるエピソードの収集、近場の温泉など観光要素や個人的に興味があったマタギの話などを取り入れてみたり。(マタギはそのまま活かされることに。個人的にはこの部分、もっと深くやってみたいです)
 おおよその方向性を定められたSさんは、いよいよ企画会議に臨むことに。そして見送る私。その後、待てど暮らせどご返事がありませんでした。「いつもならすぐご返事があるのに・・・」「やはり厳しいか・・・」「世の中は甘くはない」「これがダメなら次はどうしよう」と一人で悶々としていたところ、Sさんから「決まりました!出版OKです!」と吉報が届きました。

村を守る不思議な神様のマンガ  こうして、書籍づくりが始まりました。時間がなかったので『村1』『村2』の合体方式でいくことになりました。しかし同方式では内容が濃すぎて読むのが大変かも、という意見もあり、ならば緩和剤としてマンガを投入しよう、挿絵をもっと増やそう、また章立てのおおよその内容とページ数を決めよう、などSさんとおおよその「箱」を作り上げていきました。そして、いよいよ小松さんが「箱」に合わせて執筆をスタート。途中で学術的な発表を強く意識してしまったようで、「読者が楽しく読める本」から遠ざかることもありましたが、その際はしっかりディレクションを行い、またバランスをみながら挿絵や漫画で補強していくことで、結果的に専門書的な傾向から脱却し、「わかりやすく面白く道祖神のことを知っていただける本」「民俗学や郷土資料の枠を超えた新しい一冊」に少しでも近づけたのではないかと思います。「この本はうまくバランスが取れている」と評価を頂きほっとすることもありました。

 また個人的見解で恐縮ですが、『幻の泥塑天子を探して』の章に関して、当方がシナリオを担当した前述の展示を小松さんが書籍用に微調整したもので、最も挑戦的な構成になったのではと思います。

難解な内容を、わかりやすくした事例 〜漫画の活用〜

 4編の漫画のうち「道祖神の成り立ち編」の誕生秘話をご紹介します。
 編集のSさんから「自費出版本では語られなかった人形道祖神の成り立ちを知りたい。」とご要望を受け、下記の原稿があがってきました。※難解なイメージをお伝えしたく読まれる必要はございません。

本題へ入る前に、道祖神について簡単に説明させていただこう。@道祖神とは村に疫病や災いが入ってこないよう、境界に祀られる民間信仰の神様である。「塞ノ神」とも呼ばれるAそのルーツは日本最古の歴史書である古事記や日本書紀に登場する。黄泉の国でイザナギが死霊となった妻、イザナミたちの追っ手をさえぎるために置いた石が「道反大神」となった。これらは現世と死後との境の神様、悪霊を防ぐ神様なのだ。B道祖神とは元々、中国から来た「道の神」だが、それが日本の「境の神」である塞ノ神と習合した。Cまた、平安時代、都に災いが入らないように毎年6月と12月に行われていた・・・

 上記は第一稿の一部を抜粋したものです。専門書ならば問題ないのでしょうが、「専門家ではない、ファッションや音楽などが好きな方にも楽しんで読んでいただきたい」と考えていた私は、パッと見て難しそうと読者は思うだろう・・・と感じました。編集のSさんは「個人的には中国から来た『道の神』がどんなものなのか想像ではわからなかったのと、塞ノ神など、なかなか神様の名前でピンとこないので、補足をしてやさしい感じにできたらよいかもですね。」とやさしくおっしゃいます。それに対しての小松さんの回答は、「(道の神については)『塞ノ神と中国の道の神の習合』についての論文があるのでそれを引用したらどうか」というものでした。提示された論文には「道縁立立立」「墨書」「木製の陽物」「木簡」など、更に難しい内容であり、このままでは一層専門書化が進んでしまうと危惧した私は、漫画で伝えることを提案。

道祖神の成り立ち編の漫画 漫画を描くためには彼が伝えたいことを理解し、読者にわかりやすく表現する必要があります。読者目線での質問を投げかけると、わかりやすい答えが出てこなかったので、共に考え、内容をまとめあげました。また、リサーチで合点がいった具体的なエピソードを加えたりし、わかりやすさをできる限り追求しました。だいぶみやすくなったと思いますが、いかがでしょうか・・・?
 漫画「道祖神の成り立ち編」はKADOKAWAの電子版『村を守る不思議な神様・永久保存版』ページの試し読みでご覧いただけます。

 こうして、制作過程にはいろいろありましたが、個人的には、この本でやっと自分がリサーチしたことをアウトプットすることができ、感無量でした。(『村2』時の反省を活かすことができました!)取材中に集めることができた言葉の中には、ハッとする教えや考え方が多々含まれており、本でご紹介することができよかったと思います。

 またカラフルな道祖神画も時間をかけてじわじわ成長してくれました。巻末に画集を作っていただきましたので、アートな世界もお楽しみください。詳しくはこちらから



反省点と今後の目標について

村を守る不思議な神様の挿絵  先述の書籍『永久保存版(KADOKAWA)』や展示制作『ARTS & ROUTESーあわいをたどる旅ー』では、小松さんが目指す専門的な内容を私と同じ非専門家の方向けに軌道修正させてもらっているのが申し訳なく思いました。
 また展示や書籍化、レクチャーなどにおいて、「おもしろい」と感じる視点がそれぞれズレてきているので、これを機に今後はそれぞれが自由に伸び伸びやれたらと思います。ANPの多様性を広げておいて、力を合わせるべきところは合わせていけば、さらにダイナミックに動けるかも?と考えます。

 最後に。挿絵に登場いただいた高橋さんは、「北観音堂(秋田県大仙市)のおにょさま」づくりのリーダーです。大変奥ゆかしく謙虚な方で、インタビュー中はなかなか心の内を語られません。それでも私は「高橋さんのお気持ちを知りたい!」と、様々な角度から質問をさせていただき、ふとした瞬間に口にされた言葉を掴みました。書籍でこのときの対話が使われたので、実際の話し言葉を挿絵で描き加えました。高橋さんご本人から、のちに年賀状で「いい男に描いてくれてありがとう」とおっしゃってくださり、とても嬉しく思いました。私はこうした地元の方とのお話をご紹介していくのが大好きなので、自分の質問力とリサーチ力を向上させながら、活動の幅を広げていきたいと思います。

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WEB化

 dosojin.jpANPの活動を世に広く知っていただける大きな原動力は、何と言っても公式サイトの存在です。
「グッドデザイン」として、様々なサイトで紹介されている「dosojin.jp」。2018年、秋田市に事務所を置くneccoさん(ブランディングデザイン会社)と交流していた私は、原画を片手に人形道祖神の魅力を熱く語っていたところ、その様子を面白く思った社長の阿部さんから「道祖神のサイトはあった方がいいと思う。僕たちが手伝います」と声をかけてくださいました。

 「最終形はこんな風にしたい」と最低限のぼんやりしたビジョンを伝えただけで、サイトのデザインやディレクションは全て阿部さんにお任せし、2019年4月にリリースされました。「まるで本を読むようなwebサイトだ」と今でも評判だとか。素晴らしいサイトができ、私は喜々とブログをアップし始めました。最初はイベント告知がメインでしたが、少しずつ「読み応えがあるようにしたい」「楽しんで読んでもらいたい」と試行錯誤しながら書き始めました。とにかく「わかりやすく」「ストーリーをしっかりつくる」ことを大切に重ねていきました。

 先日東京オフィスに移住したneccoの阿部さんやデザイナーの今さんに「ブログを読んでますよ。ネット情報ではなく、自分達の足で稼いだ“第一次情報”というのが強みだと思います」「少子高齢化でますます厳しくなる道祖神づくりを、写真等アーカイブとしてサイトを利用することもできますね」とアドバイスを頂きました。「僕たちが宮原さんのように道祖神にハマってしまったら客観的な思考ができなくなるので、のめり込まないように気をつけています(笑)」とおっしゃりながらも、道祖神のことを気にかけてくださっていることがとても嬉しく思いました。
→ neccoさんのクールなサイトでANPページをご紹介いただきました!



<補足>現在について

 2021年5月、私は秋田を離れました。全ての情熱を掲げて秋田を駆け巡っていたので、離れた当初は心の中がポカンと空洞のような状態でした。しかしKADOKAWAから書籍が刊行されたこともあり、2021年はありがたくも様々な場所で講演をする機会に恵まれました。

京都市立芸術大学様とのコラボ企画福島県立博物館様とのコラボ企画石巻まちの本棚様とのコラボ企画

 2022年現在、大阪在住の私は現地に赴くことが難しくなり、取材を小松さんに委ねることにしました。しかし知りたい情報は自らのリサーチでしか得られないという当たり前のことに気付き、中途半端に関わるのはやめようとANPの運営を小松さんに一任することにしました。(2023年の時点では、お任せするどころか一層活動に深く関わらせていただいております・・・神様のお導きかもしれません・・・)とはいえ、これまで筆者がリサーチや企画/参画/情報を提供したものについては、絵以外のすべてを彼の実績として発表されていますので、今後はクレジットをいれてもらえたらと思います。・・・むしろ過去に拘らず新たな境地を切り開いていくことが、ANPにとって一番よいのかもしれません。

 これまでの活動の中でとても残念だったことは、上記でお話しした当方の「絵以外」の実績がこれまで曖昧のまま消えていく状況です。「宮原は絵/アート表現のみ(リサーチや企画には携わっていない旨として)」と相棒の小松さんが常に説明されているためです。正確な情報を伝えてほしいといつも思いますが、認識の違いでしょうか(半ば諦めていますが)。リサーチを含めて企画やシナリオづくり、ディレクション等の全てが、大切な表現活動の一つであるのですが、多くの時間と労力を注いで作り上げたものにも関わらず、「絵のみ」という評価を受けてきました(勿論、絵を評価いただいたことは大変嬉しく思います)。途中で肩書を「アートクリエイター」に変更しましたが・・・私自身としては、絵だけではなく企画やリサーチを積極的に関わってきたので、企画やリサーチ面でのクレジットにも入れていただきたかったです。
 今後は人形道祖神に関するこのような活動で培った経験を活かし、様々な伝統行事のリサーチを行い、民俗芸能の魅力をより多くの人へ発信するお手伝いをしていけたらと思います。下記は秋田を去ってからの主な活動のご紹介です↓


【関連ブログ】

 秋田県+ABS秋田放送「不思議な神さま館」がニプロハチ公ドームで実現!2023.11.10

同年2月に秋田県とわらび座さんとご一緒したイベントでメインビジュアルの絵(秋田の伝統行事をモチーフ)を気に入ってくださったABSのMさんからお声がかかり、「新・秋田の行事 in 大館2023」のメインビジュアルと人形道祖神の展示が実現いたしました。道祖神展示だけでなく、道祖神の文化を守り続ける地元の方々がどのような思いでされているのか、現地に足を踏み入れて初めてわかるエピソードを含め、「妹尾河童」さんワールド的に(!?)、線画で綴る「4つの集落の取材記録」展示も併催。文化財の魅力を伝えるべく挑戦しました
「ご報告<1> 4メートルの人形道祖神の搬出」
「ご報告<2> 地元の方との絆」
「10月の秋田出張旅 その2 〜山田集落」
「11月イベント展示のリアルな進行状況」
「メインビジュアル制作 〜秋田犬を描く」
「道祖神活動が秋田県より『関係人口』としてご紹介いただきました」

 無形文化財の魅力発信における「絵」の力を実感 2023.2.6

人形道祖神の魅力を、普通(非専門家)の感覚で伝える大切さを実感した秋田県主催のイベント「あきた無形民俗学文化財万博」。初めてトークに「人形道祖神の入門編」を取り入れ、どなたでも楽しんでいただけるようにしました。その結果、これまでにない大きな反響をいただくことに。
「その1 〜出発・NHK編」
「その2 〜原画展示編」
「その3 〜わらび座さんの魅力 前編」
「その4 〜わらび座さんの魅力 後編」
「その5 〜ギャラリートーク【前編】」
「その6 〜ギャラリートーク【中編】」
「その7 〜ギャラリートーク【後編】」
「その8 〜フィナーレ、『なまはげ』と『ささら』」

 「母から娘へ、伝統をつなぐ」〜コロナ禍で縮小された横手市田ノ植のカシマ行事〜 2023.6.26

2人のお子さんを育てられている女性から届いたメールがきっかけで取材が実現。伝統行事をなんとか娘につないでいこうとされる姿を目の当たりにし、心が熱くなりました。小学4年生のお嬢さんが夏休みにカシマ行事を研究し、横手市の社会科研究発表会に挑戦する過程を追います。 「前編 田ノ植のこと・秋田の近代史に寄り道」
「中編 カシマ行事と柴田さんの家族史」
「後編 社会科研究発表のこと、母から娘へ伝統をつなぐ」

 「名古屋市立大学で行ったレクチャートークのご報告」 2022.9.5

専門家ではない筆者のこれまでの活動をご紹介し、学生の皆さんが今後予定されているリサーチに少しでもご参考になれるよう、レクチャーを務めました

 「NHKあさイチ『愛(め)でたいnippon秋田 定番が華麗に進化!あきない秋田』で紹介いただきました」2022.12.5

人形道祖神が全国に広く知っていただけた貴重な機会となりました。岩崎のカシマサマと北観音堂のおにょさまが登場。

 井戸端会議は面白い!地元の方々のリアルなお声を集めて 2022.12.28

文化庁案件。ジンジョ祭りをプロの方が撮影。コーディネーターを務めながら「行事の魅力に興味を持っていただけるよう、どう伝えていくべきか」を考えるよい機会となりました。

 秋田県以外の地元の魅力

「<前編> 奈良の秘境で 〜五條市について」 2023.5.5
「<中編> 奈良の秘境で 〜王隠堂さんのお料理前半と奈良は薬の国」 2023.5.10
「<後編> 奈良の秘境で 〜王隠堂さんのお料理後半と高齢化事情」 2023.5.16
奈良県五條市の農家レストランでゆるりお話を伺ったことがきっかけで、奈良はかつて薬の国であったことを知りました。「魅力ある場所は秋田以外にもある」と改めて感じ、自分が得意とする絵や地元の方へのリサーチを通じて、その土地の魅力を自分なりの方法で発信していきたいと考えるようになりました

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